妙義34エンナーレ!へのご寄稿
34エンナーレ 口上
サアてお立ち会い。御用とお急ぎでない方はゆるりと見ておくれ。
遠目山越し笠のうち、物の文色と理方がわからぬ。ゲンダイビジュツは判らねェとのたもうて、見に来もしなきゃア、面白いも面白くねェも判らぬが道理。
ここにご紹介いたしますは34エンナーレ。何があるかと思いきや、34年に1度の展覧会てェんだから大変だ。奇天烈なのは名ばかりにあらず。ひと癖ふた癖、なくて七癖、絵画に陶芸、イラスト、インスタレエション。なんでもありのワンダーランドだよお立ち会い。
今回のテエマは、「生活空間における美術」ときたもんだ。いろいろゴタクを並べちゃあいるが、
「ちょいと奥さん、このアート、お宅におひとつ、いかがです?」
そういうことだ。
買っておくれたァ言わねェ、お宅のあの壁、本棚、玄関、神棚に、あれがあったら面白かろう。そんな妄想をしておくれ。
展示室でかしこまってるモノどもが、奇妙奇天烈摩訶不思議、ずうっと身近に、へんてこに、可愛く見えてくるってェ寸法だ。
そんな妄想ご免だね。そんな御仁は、家内安全、商売繁盛、学問成就。効きそうなモノ、探しておくれ。
ここは関東平野の西の端、霊峰妙義山のお膝元。なにかいいこと、あるかもよ。
サアサア、ともかく、入って中をごろうじろ。投げ銭放り銭はお断りだィ。
奴らの叫びが届くかどうか、そりゃアあなたの、お心しだい。
もしも、もしもお宅のあの壁に、本棚、玄関、神棚に、ああこれを置いてみたいわい、そんな気持ちになったなら。
「アレヲ オヒトツ チョウダイナ」
そっと、耳打ちしておくれ。
伊藤佳之
(福沢一郎記念館(世田谷)学芸員)